2018年に政府が副業を推進する動きを受け、一部の企業で副業解禁をする動きが出ましたが、現状は多くの企業が就業規則で副業を禁止している状況です。
では、いまだになぜ多くの企業で副業は禁止されているのでしょうか。企業が副業を禁止する理由や副業禁止の会社で副業をする方法などを詳しく紹介します。
就業規則で副業禁止にしている理由は?
副業禁止の会社が多い理由を解説します。
社員の労働時間の管理ができなくなる
自社の社員が複数の企業で働くと、働く時間は合算され、1日8時間の労働時間を超えると割増賃金を支払わなければなりません。
副業先の労働時間や休憩時間などを含めた管理や見直しが必要になるため、企業側は副業に積極的にはなれない理由があります。
長時間労働になってしまう
本業の仕事を行った上で、さらに別の仕事をするとなると長時間労働につながります。
会社が副業を認めてしまうと、社員に長時間の労働を促してしまい、生産性の低下やうつ病を引き起こしてしまうのです。
社員の健康管理を重視する企業や、本業の業務に集中してほしい企業は副業を認めない傾向にあります。
他者への情報漏洩のリスク
副業をすると、本業の情報が他社へ漏洩しやすくなります。セキュリティ面などに注意していても、口頭で情報が流れてしまうリスクが多いです。
特に競合の会社で副業をする場合、本業で成果が上がらない人でも、本業の情報を利用して副業で成果を出すこともあります。情報漏洩のリスクから自社の利益を守るためにも副業を禁止している企業が多いです。
公務員は基本的に副業禁止
公務員の副業は、国家公務員、地方公務員にかかわらず、法律により原則禁止されています。
国家公務員法第103条、第104条、地方公務員法第38条では、営利企業の役員や社員として働くことや任命権者の許可なく報酬を得る兼業に従事してはならないという制限がかけられているのです。
例外的に年間4万件ほどは副業が許可されていいますが、そのほとんどは、社会貢献活動に関わる兼業と実家の農業や不動産賃貸など。一方で、実の母を訪問介護員の立場で行って収入を得ていた公務員は懲戒免職になり、許可なくアパート経営を行っていた公務員が減給されるなど、副業を行ったことで処分の対象になる国家公務員、地方公務員が増えています。
得た報酬額や副業をしていた期間などに応じて、懲戒免職など重い処分がくだされるケースも多いです。
「副業禁止」は法的にOKなの?
「副業禁止」とはあくまで会社規定であり、法律で禁止されているわけではありません。詳しく解説していきます。
法律で副業は禁止されていない
副業は、法律ではどのように定義されているのでしょうか。日本国憲法第22条第1項では、国民の職業選択の自由を保障が定義されています。
社員が副業をしたからといって、副業をしたという理由だけで社員を急に解雇できません。就業規則で副業禁止の項目があっても、合理的な理由がなく副業を理由に懲戒解雇をすることは企業側の濫用にあたり、解雇自体が無効になる裁判例が出ています。
副業禁止の会社で解雇される時とは?
副業が理由で解雇される条件には、競合他社で役員として働いていたケースや本業の仕事が勤まらなくなるほどの長時間労働、休業中に他社で仕事をしていたなど、倫理的にも本業に影響が大きい場合です。
副業をすることによって本業の仕事や会社に不利益を与えたことで解雇されます。副業禁止の会社で解雇になる時は、会社の業務や秩序に影響を及ぼすような副業をしており、再三にわたる注意勧告に従わない時がほとんど。会社にバレずに、本業の業務に影響がない程度に働くのであれば、問題にはならないでしょう。
副業がバレる理由は?
副業がバレる原因となるものを解説します。
同僚からバレる
会社の給料や仕事に不満があると、同僚につい話してしまう人が多いのではないでしょうか。
副業をやっていることもついつい話してしまいますが、その同僚から上司や人事に連絡されるケースがあります。
安易に副業のことを同僚に話したり、SNSに掲載するのは避けましょう。
副業先でバレる
お店のアルバイトなどで副業をしていると、会社関係の人がお客さんとしてやってくることがあります。
場所や時間帯など、知人にバレないように注意していても、対面で仕事をする時にはそんなリスクがつきものです。飲食店のほか、ホステスやホスト、配送業などは不特定多数の人と会う仕事のため、バレやすいでしょう。
バレたくない人は、人と顔を合わせない工場や夜間清掃の仕事や在宅で行う仕事を選ぶと安心です。
副業分の住民税でバレる
住民税は特別徴収税額決定通知書が従業員用、会社用にと2部会社に届きます。
会社は通知書を確認し、会社の給与に比べて住民税が高い時、副業をしていることがバレてしまうのです。副業で収入を得ていて確定申告をする時には、自分で住民税を納付する「普通徴収」を選びます。普通徴収を選ぶと、会社の給与に係る住民税は会社、副業の収入に係る通知書は自宅に届くため、副業分の住民税額がバレずに済むのです。
確定申告をする必要がある人は、申告の際は必ず普通徴収を選びましょう。
給与所得のアルバイトからバレる
副業もアルバイトとして働くと給与所得になり、アルバイト先の会社が給与天引きします。
普通徴収にならないため、バレる可能性が高いです。アルバイト先で社会保険に入ると、「被保険者所属選択届・二以上事業所勤務届」の提出が必要になり副業はバレてしまいます。
副業禁止の会社では、給与所得のアルバイトの副業は選ばず、在宅でできる仕事などを選びましょう。
副業禁止の会社でもできる副業
副業禁止の会社でもできる副業をまとめました。
資産運用系副業
株式投資
株式投資は資産運用のため、副業にあたりません。企業が発行している株を購入することで、値上がり益や配当金、株主優待を得ます。
値上がりが期待できる企業の株を選ぶのには、株や経済の基礎知識、株価の値動きチェックが必要ですが、知識を得ることで初心者でも利益を上げている人が多いです。株式投資で得られる利益は年平均投資額の5%ほど。
値上がり益だけでなく、株主優待特典を目当てに株式投資をする人もいます。副業禁止の会社で株によって利益を得ても全く問題ありません。
投資信託
副業にあたらない資産運用のひとつに投資信託があります。投資信託は、専門家が選んだ投資先に分散投資することでリスクを減らし、長期的に利益を出す投資手法です。
たとえひとつの企業の値が下がっても、他の企業の値が上がればトータルで利益を出すことができるため、株式投資のように投資に慣れていない人でもチャレンジできます。一度投資すればこまめな値動きチェックは必要なく、資産を預けっぱなしにしても問題ありません。
投資家は少額から投資が可能で、年に4%程度の利益が期待できるでしょう。投資信託はあくまで資産運用のため、副業禁止の会社でも安心して利用可能です。
FX
FXは、外国為替証拠金取引のことで、外国通貨の価値が低い時に購入して、高くなったタイミングで売却することでその差額から利益を得る方法です。
FXにはレバレッジというシステムがあり、口座にある資金の25倍の取引が可能なため、手持ちの資金が少額でも取引ができます。通貨の市場は世界中で開いているため、24時間好きな時間で取引が可能。本業を持つサラリーマンは、夜間の取引をしている人が多いです。
FXでは、年間の利益が10万円未満の人がほとんどですが、レバレッジを用いて取引次第でさらに利益を伸ばすことができます。FXで20万円以上稼ぐと確定申告が必要ですが、副業には当たらないため、利益を出しても堂々と申告できます。
暗号資産(仮想通貨)
暗号資産(仮想通貨)の投資も資産運用です。暗号資産は、ビットコイン、イーサリアムなどが有名ですが、少額から投資でき、手間があまりかかりません。
24時間取引ができるため、好きな時間で自分のペースで投資活動ができるでしょう。暗号資産の値動きは激しいため、急騰、急落などのリスクはありますが、分散投資をすることでリスクを抑えられます。
年間数万円以上の利益を上げる人が多いですが、副業禁止の会社でも安心してできる副業のひとつです。
不動産投資
アパートやマンションを購入して、借主に部屋を貸し出して利益を得る不動産投資。不動産投資も投資のひとつであり副業にあたりません。
相続で不動産を得て、物件を貸し出したいという人も多いでしょう。個人の資産運用の範囲で不動産投資を行う場合には、利益を得ていても会社から何か言われることはないでしょう。不動産投資の件数や金額が大幅に大きくなり、事業として法人化すると副業になるため、副業禁止の会社では注意が必要です。
不動産投資には、資金準備や運用物件選びがポイントですが、安定的に年間4%〜5%の収益を得られます。
趣味に関する副業
ハンドメイド販売
趣味でハンドメイドを制作している人は、その作品をフリマアプリやハンドメイドマーケットで販売ができます。
作った作品をたくさんの人に見てもらい、購入してもらえるフリマアプリは便利です。1つあたりの利益は数百円〜2千円程度のため、所得が年間20万円に届かなければ確定申告をする必要はありません。
趣味の範囲で活動を行えば、副業としてバレたり、とがめられることは少ないでしょう。
バンド活動、音楽制作
本業以外の時間にバンド活動や音楽制作をしている人は副業をしていると言えるのでしょうか。趣味でライブチケットを販売したり、音楽を販売する場合、活動の目的は営利というよりは趣味と言えます。
音楽活動では、収入よりも活動にかかるスタジオレンタル代など経費も多いです。プロダクションやレコード会社と契約せずに個人的に活動している場合には、経費などを除いて年間20万円以内であれば確定申告の必要はありません。
ブロガー
自分の考えや日々の生活を書くブロガー。ブロガーは、広告掲載やアクセス数で収入を得ることができます。
本業以外の時間にブログを書く程度では、本業に支障を与えているとは言いにくく、趣味として続けることができるでしょう。ブログが人気となってある程度の収入がある時には、ブログに記載している情報から周囲にバレたり、確定申告の必要があるため注意が必要です。
ブログの内容が本業の会社に不利益を被る内容の場合、特に注意しましょう。
覆面調査
レストランや美容室などで覆面調査をし、ポイントの還元やサービスがほぼ無料で受けられる覆面調査の仕事があります。
覆面調査では、現金やクレジットカードで料金を支払い、後でポイントや現金で調査料が支払われる流れです。商品やサービスを無料もしくは格安で試せる趣味のような側面があるため、調査をしただけでは副業にならないことがほとんどです。
報酬も年間所得20万円を超えることはあまりないため安心して活動ができるでしょう。
簡単ネット系副業
ポイ活
本業を持つ人でも気軽にポイントを稼いでお小遣い稼ぎができるのがポイ活です。
ポイ活で得られたポイントは雑収入にあたり、年間20万円以上のポイントを稼ぐと確定申告が必要になります。商品やサービスを購入しているだけでポイントを稼いでいる場合には、副業ではないと判断されるでしょう。
アンケートモニター
すき間時間を利用できる手軽な副業にアンケートモニターがあります。アンケートモニターは、簡単な質問に答えることでポイントがもらえますが、ポイントは雑収入です。
アンケートモニターの収入は月に数千円が限度のため、確定申告が必要な金額に到達しないケースがほとんど。本業の仕事中にアンケートに答えたりしない限りは、副業として責められることはないでしょう。
フリマアプリ
スマホで商品の写真を撮ってアップするだけで簡単に販売ができるのがフリマアプリです。
さまざまなものが匿名で販売できるため、断捨離などで活用できます。自宅にある不要品の洋服や雑貨などを販売する場合、副業に当たりません。
転売目的で大量に商品を仕入れて販売している場合、転売業として副業としてみなされることが多いですが、自分が使う目的で購入した商品をフリマサイトで販売する場合は、副業禁止でも安心して利用できるでしょう。
販売する商品が中古であればあまり問題ありません。
まとめ
現状、多くの企業が副業を禁止していますが、法律では副業は禁止されていません。
企業が副業を認めてしまうと、企業に不利益になることが予想されるため、副業解禁に積極的になれない背景があります。公務員は原則副業が禁止されているため、副業をする際には事前に許可が必要ですが、一般企業に勤める人ができる副業はたくさんあるのです。
副業に該当しない資産運用の投資や、年間20万円未満の所得を得る副業であれば確定申告の必要がなく、趣味として考慮される副業があります。
本業の業務に影響が少ない、副業にあたらないものを選べば、安心して副収入を得られるでしょう。