収入と所得、源泉徴収や確定申告でよく出てくる言葉です。
同じような意味ではと勘違いしてしまう人がいますが、税金の計算では区別して考えなければなりません。
ここでは、収入と所得の違いを詳しく紹介し、所得税の計算方法から控除できる項目までをわかりやすく解説します。
収入と所得の違い
収入とは
収入とは、税金、社会保険料などが引かれる前の総支給額や報酬です。
会社で働いている人は、会社から支払われる給与、副業をしている人は、仕事で得た売り上げそのものが収入にあたります。源泉徴収票では、「支払金額」に記されている金額です。
所得とは
収入から、経費を差し引いたものが所得です。
会社員の場合、給与所得控除額を引いた金額が所得にあたります。会社員の場合、個人事業主のように経費を給与から差し引くことはできませんが、給与所得控除として差し引くことが可能です。
源泉徴収では、「給与所得控除後の金額」に記されています。
手取りとは
手取りは、所得からさらに税金や社会保険料を引いた金額で、実際にもらう金額です。
給与として銀行に振り込まれる金額は手取りに該当します。
所得税の計算方法
所得税とは
所得税は、所得に応じてかかってくる税金で、所得税率は収入によって上がります。
所得税は、給与所得から社会保険料や給与所得控除、配偶者控除などを差し引いた課税所得から計算。具体的には、所得税=課税所得×税率-税額控除額によって算出されます。(※参照 国税庁No.2260 所得税の税率)
給与 | 税率 | 控除される金額 |
1,000円〜1,949,000円 | 5% | 0円 |
1,950,000円〜3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
3,300,000円〜6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
6,950,000円〜8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
9,000,000円〜17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円〜39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 | 45% | 4,796,000円 |
給与所得控除とは
給与所得控除は、会社員に認められている経費のようなものです。
会社が負担してくれる経費以外にも、スーツや文房具などの会社のために費用がかかることが多いのではないでしょうか。個人事業主は、かかる経費を全て算出しますが、会社員の場合には、領収書なしに年収の割合に応じて一定額が控除されます。
給与所得控除は、年収に応じて無条件に差し引かれ、収入によって金額が決まっています。
令和2年以降の給与所得控除額は以下の通りです。(※参照 国税庁No.1410 給与所得控除)
給与 | 給与所得控除額 |
1,625,000円まで | 550,000円まで |
1,625,001円〜1,800,000円まで | 収入金額×40%-100,000円 |
1,800,001円〜3,600,000円まで | 収入金額×30%+80,000円 |
3,600,001円〜6,600,000円まで | 収入金額×20%+440,000円 |
6,600,001円〜8,500,000円まで | 収入金額×10%+1,100,000円 |
8,500,001円以上 | 1,950,000円(上限) |
特定支出控除とは
業務に必要と会社に認められれば、会社員でもその費用を特定支出控除として控除を受けられます。
特別支出控除とは、転勤にかかる転居費、資格取得費用、書籍購入費、接待費用など。給与所得者には、給与所得控除がありましたが、それ以外に特定の支出があり、給与所得控除額の金額の1/2以上の金額だった場合、超えた金額に対して控除してもらえます。
所得控除とは?
所得控除とは
所得控除は、納税者一人一人の事情などが考慮され要件を満たすことで控除を受けることが可能です。
例えば、年収が500万円でも、扶養する家族が居たり、出産などで医療費がかかったら税金の負担が重くなってしまいます。所得控除は、納税者の家族やその年における状況が考慮され、所得税を減らすことが可能です。
どんな所得控除がある?
年収2400万円以下の人が一律控除される基礎控除の48万円のほか、医療費控除、生命保険控除、寄附金控除などがあります。
ふるさと納税の寄附金控除や、生命保険控除は、申請する人が多いのではないでしょうか。これらは、控除を適用するために申請が必要なので、該当する控除があるかどうかをチェックしてください。
節税ができる?
所得税は、所得が高くなればなるほど税率が上がる仕組みのため、所得を減らすことで節税できます。
会社員で手軽にできるのが、ふるさと納税(寄附金控除)やiDeCoです。ふるさと納税は、全国の自治体に寄付をし、寄付のお礼として返礼品がもらえる制度として人気があります。自己負担額は2,000円で、返礼品を受け取ると同時に、所得税、住民税の減額が可能です。
iDeCoは、個人型確定拠出年金のことで、毎月一定額を積み立てて、運用し、60歳以降に年金か一時金として受け取ります。積み立てる掛け金は全額が所得控除の対象になるため、所得税と住民税の軽減が可能です。
配偶者控除とは?
配偶者控除って?
配偶者控除は、働いている人に配偶者がいる場合、その税負担を減らす制度です。
配偶者控除を適用すれば、税負担が所得税、住民税と合わせて5万円〜10万円以上も減るため、夫、妻がいる人は必ず申請しましょう。
配偶者控除を受ける条件
配偶者制度を受けるには、法律で認められた配偶者であること、納税者と生計を共にしていること、配偶者の年間所得合計が48万円以下(給与の場合は103万円)であること、青色申告者・白色申告者の専業専従者でないことが条件です。
納税者の所得が1000万円を超えると対象外になってしまうので注意してください。
配偶者のパート収入が103万円超えたら控除は受けられない?
配偶者控除を受けるには、年間給与が103万円以下という条件がありましたが、超えてしまったら控除は受けられないのでしょうか。
「配偶者特別控除」という制度があり、年収103万円を超えても150万円以下なら税負担を抑えられます。年収150万円を超えると税負担が増え、201万円を超えると配偶者特別控除は受けられなくなります。
配偶者の収入によって、社会保険料の支払いや住民税の発生があるため、配偶者控除や配偶者特別控除を受けたい人は、年収150万円までということを覚えておいてください。
所得控除を受けるのに必要な書類
所得控除を受けるには?
所得控除を受けるには、控除の種類や条件によって異なり、支払った金額を証明する証書が必要です。
配偶者控除では、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を申請します。扶養する配偶者の名前や生年月日、マイナンバーの情報が必要です。生命保険料を控除するときには、会社員の場合、年末に渡される「給与所得者の保険料控除申告書」を記入し、生命保険会社から発行される「生命保険料控除証明書」を添付して提出します。
個人事業主の人は、確定申告で所得控除を受けられる仕組みです。控除項目によって必要な書類は異なるので、年末調整や確定申告に間に合うように準備しましょう。
まとめ
収入と所得は同じようで大きな違いがありました。所得控除は15種類もあり、該当する所得控除を申請すると、税負担を減らすことが可能です。
特に配偶者控除は、配偶者の所得額によって控除額が変わります。自分の所得や控除できる所得控除を確認し、年末調整や確定申告で忘れずに申請を行いましょう。